花が蜜を出す理由は、これによって
昆虫などを引きつけ、花を訪れさせることで、昆虫に花粉をつけ、同種の別の花で受粉を行わせるためである。つまり、
虫媒花が虫を呼ぶために差し出す対価が蜜である。花の香りや、花びらの色は、昆虫などを呼び寄せるための信号になっているが、昆虫の側から見れば、蜜の在処を示すものとしての意味を持つわけである。人間の目からは単色の花びらに見える花で、
紫外線に反応するフィルムで撮影すると、花の中心に向けた集中腺の模様が現れるものが知られている。これは、昆虫には紫外線が見え、その目で見れば、目標がそこであることを示す効果があると考えられる。同時に、花の色の美しさが、我々に向けたものではないことも示していると言えよう。
昆虫など、花粉媒介者が花に訪れたときに、花粉の媒介を有効に果たせるように、特殊な
適応を持つ花もある。たとえば花びらの基部に深いくぼみ(距)があって、その底に蜜をためるものがある。この場合、花の奥深くに口をつっこまないと蜜が吸えないので、花粉をくっつける可能性が高まると考えられる。しかし、昆虫の側では、花粉を付けられるのが嫌なわけではないだろうが、その手に乗らないものがいて、花の側面から口を差し込んだり、底の部分を破ったりする、
盗蜜行動に出るものがある。
有名なのは、
サクラの場合で、葉柄に数個の蜜腺を持っている(花外蜜腺)。他にも、葉や花軸などに蜜腺を持つものがある。これらがどのような役に立っているかは定かではないが、一説によると、
アリを誘引するためではないかと言われている。アリは、小型ではあるが、数が多く、集団で活動する、強力な肉食動物であり、昆虫レベルの小型動物の中では恐ろしい存在なので、アリがうろうろしていれば、草食昆虫も寄りつきにくいというわけである。アリを住まわせるための特別なしくみを持つ、
アリ植物というのがあるが、それに近い方向の
適応と言えよう。